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図書館コラム
親力アップサイト
2015/11/27

【第50号】「親子いっしょに読書」

少し大きくなった子どもに

 子どもが小さいころは絵本の読み聞かせを毎晩のようにしていたのに、大きくなってからは遠ざかってしまった、という声が聞かれます。また、もう大きくなって字も読めるのだから絵本を読んであげるのは本人のためにならない、とお考えのご家庭もあるかもしれません。けれども、文字をおぼえたての子どもが自分だけの力で読書を楽しむのはまだまだむずかしいものです。また、親子で1冊の本を楽しむことはとても良いことだと考えます。

 たとえば、昔話集や短めの物語を一緒に読んでみてはいかがでしょうか。寝る前のひととき、数ページずつ読んでいって1冊を読み終える頃にはおとなも子どもも満足感が得られるでしょう。

 物語があまり好きでないお子さんもいます。そんなときは子どもが好きなジャンルの本をいっしょに読んでみるのもいいかもしれません。昆虫や動物の図鑑、鉄道や自動車の写真集、星座や宇宙の本など、子ども向けでも内容は充実していてわかりやすく書かれているのでおとなが読んでも役に立ちます。

親子で熱中

 わたしの家族のことをお話ししますが、子どもたちが絵本に興味を示さなくなったころ、親子でいっしょに読んで熱中した本があります。

 そのうちの1冊がスズキコージの『大千世界の生き物たち』です。著者は絵本作家として有名ですが、この本は児童文学雑誌に連載されたエッセイをまとめたものです。彼にしか見えない空想上の生き物を見開き2ページに絵と文章で説明しています。

 語り口は子ども向けとはいいがたいのですが、「本と本のわずかなすきまに住んでいるスキママン」とかふだん使っていないふとんにひそむ「フトノトフ」、小学校の地下のほらあなに住んでいる子だくさんの「マザーパチコ」など、ネーミングセンスばつぐんで、独特の絵とあいまって、子どもたちの心をとりこにしてしまいました。踏切をみると、「フミキリンだ」と喜んだりして、大千世界ワールドをみなで楽しんだものです。


長い物語も

 もう1冊はトールキンの『ホビットの冒険』です。映画「ロードオブザリング」を見て興奮した子どもたちに、「この映画の前のお話あるけどな……」と夫が言ったため、『ホビットの冒険』を読むことになりました。

 映画「ロードオブザリング」の原作の『指輪物語』は三部作で大変長いのですが、『ホビットの冒険』は1冊本、なんとかなると毎晩数ページずつ夫が読み始めました。途中であきらめるかなと様子をうかがっていたら、自分もお話の面白さに引き込まれてしまい、ほかの用事をしていてもついつい聞いてしまいます。

 あるとき、夫が仕事で遅くなったので、子どもたちに頼まれて代わりに読んでみたところ、「やっぱりとうさんのほうがいい」と言われました。アニメの声優が交代して不評だったようなものでしょうか。夫はそれを聞いて得意げに毎晩早く帰ってきては読み続けました。

 一度読んで知っている物語でも、声に出して読まれると意外な言葉づかいがあったり、情景がはっきりとうかんできたりして新しい発見に驚いたりしました。

 数か月たって物語もクライマックスにさしかかり、あともう少しで終わり、というところで夫は睡魔に勝てず「続きは明日」と言って寝てしまいました。子どもたちはがまんしきれず、とうとう自分たちでその日のうちに最後まで読んでしまいました。

 それから子どもたちは自分でもどんどん本を読むようになった……というわけにはいきませんでしたが、物語の面白さに大人も子どもも満足し、1冊の本をいっしょに楽しめたということが忘れがたい思い出となっています。


読書の手助けを

 子どもがひとりで本や読書の楽しむようになるまでには、いろんな手助けが必要です。子どもが少し大きくなっても、親子いっしょに本を楽しんでもらえばと思います。

 本にはさまざまなものがあり、それぞれの本にちがう魅力があります。親子で楽しむ本を探しに、ぜひ図書館をご利用ください。

 

  ・『大千世界の生き物たち』架空社 

  ・『ホビットの冒険』J.R.R.トールキン/作 瀬田貞二/訳岩波書店

  ・『指輪物語』J.R.R.トールキン/作 瀬田貞二/訳 評論社


09:00 | 親力アップサイト
2015/11/27

【第40号】「子育てに図書館を」

「期間限定」のお楽しみ?


 「期間限定」という言葉に弱い方、いらっしゃいませんか?子どもを抱いたり体を寄せあったりして、おとなが本を読んであげられるのは、考えてみれば子どもが大きくなるまでの短い間だけかもしれません。子どもたちは聞こえてくる声にじっと耳を澄ませ、本を見つめながらお話の世界に入り込むのが大好きです。おとなにとっても、子どもといっしょに本を楽しむひとときは、「期間限定」のお楽しみかもしれないのです。このチャンスを逃すのは、もったいないではありませんか。
 大学生に子どもの頃好きだった絵本についてレポートを書いてもらうと、思い出の絵本とともに、大好きなおとなの人に読んでもらった、幸せな記憶がよみがえるそうです。忙しい毎日の中で、身近なおとなたちの愛情を肌で感じる、貴重な機会だったのでしょうね。自分が大切にされ、愛されていることを実感すれば、子どもたちはきっと心豊かにのびのびと育っていくことでしょう。

子どもたちへのサービス


 大阪市では、各区の小さな図書館から、西区の中央図書館まで、どこでも子ども向けのサービスをしています。新しく出た本も、長年読みつがれてきた物語や絵本も、たくさんそろえています。赤ちゃん向けの手のひらサイズの絵本もあります。子どもさんのお気に入りがきっと見つかることでしょう。「空はどうして青いの?」などと聞かれて、答えに困るような時も、わかりやすく書かれた知識の本を活用して、子どもの好奇心を満たしてあげましょう。
 子どもたちに本や物語に親しんでもらえるよう、さまざまな行事もしています。「えほんのじかん」「おたのしみ会」といった、絵本の読み聞かせや紙芝居などの催しや、赤ちゃん向けの絵本やわらべ歌を楽しむ、乳幼児中心の集まりもあります。時には人形劇や工作教室もしています。慣れてくれば、昔話などを子どもたちに語ってきかせる「ストーリーテリング」を楽しむこともできるようになるかもしれません。

子育てを応援しています!


 図書館のサービスは、資料の貸出や催しだけではありません。わからないことを調べたり、疑問を解決したりするお手伝いもします。離乳食の作り方や、ハロウィーン用の衣装など、困ったことはありませんか?こんなことがわかればいいなあと思われたら、ぜひ図書館に聞いてみてください。相談担当の司書が、資料を総動員して一緒に調べさせていただきます。
 また、「子育て支援情報コーナー」には、子育てに役立つチラシやパンフレット、催しのポスターなども集めて、子育てを応援しています。
 ところで、「ブックスタート」という言葉を聞いたことはありますか?すべての赤ちゃんとまわりのおとなの方が、絵本を仲だちに心ふれあうひとときをもてるように、世界各地で行われている活動です。大阪市では2003年4月生まれの赤ちゃんから、絵本をプレゼントしています。1歳未満の赤ちゃんがおられる方は、ぜひご参加ください。他のお子さんたちや保護者の方と、お友達になれるかもしれませんよ。
ブックスタート」の詳細(大阪市のページにジャンプします)

お気軽にお越しください


 子どもと一緒に図書館に来ることをためらわれる理由は、「子どもが静かにしていられないから」という方が多いようです。
慣れない場所でじっとしているのが好きな子どもは少ないでしょう。もし眠たいとか外で遊びたいとかむずかるようであれば、子どもさんの気持ちを優先してあげてください。無理強いしては図書館が嫌いになるかもしれませんし、徐々に慣れて楽しんでもらえるようになるのを気長に待ちましょう。
  生まれたばかりの赤ちゃんも大歓迎です。大阪市の図書館では、0歳から図書館カードを作ることができますので、「行きつけ」にしてくださることを願っています。
 どうぞ、みなさんも子どもといっしょに本の楽しみを味わってください。図書館は喜んでそのお手伝いをさせていただきます。
08:00 | 親力アップサイト
2015/11/27

【第30号】「お父さんも絵本でキャッチボール」

赤ちゃんともっと遊びたい


 私事で恐縮ですが、昨年5月に初めて父親になりました。抱っこ・おむつ・ミルク等々をなんとかこなしつつ数ケ月が過ぎて、ほぼ寝る、泣くだけだった我が子が、声をかけると笑顔を見せたり、きょろきょろしたりするようになっています。

 みなさんは、赤ちゃんとどうやってコミュニケーションをとっておられますか?例えば、帰宅して赤ちゃんの前で「ただいま」「元気にしてたか?」とほっぺをつんつんしながら声かけ。ゴロンと寝ている赤ちゃんに「いないいないばー」。膝の上に座らせ赤ちゃんと手をつないで「ぎっこんばっこん」、といったところでしょうか。赤ちゃんはキャッキャと喜んでくれます。でも、もっと一緒に赤ちゃんと遊ぶ方法があったらと思ったことはありませんか?それなら、歌あそび・手あそび、絵本の読み聞かせはどうでしょう。

歌あそび・手あそび


 「げんこつやまのたぬきさん~♪」からはじまるおなじみの歌があります。歌にあわせて赤ちゃんの手を打合せたり、前後上下に動かしたり。赤ちゃんの体を動かす遊びは、ちょっと力のあるお父さんの方が向いてるかもしれません。「いちりにりさんり」というあそびはマッサージとくすぐりが合わさっていて赤ちゃんも大喜び。歌あそび・手あそびは、スキンシップしながら運動やマッサージもしてしまいます。6ケ月になる我が子には、他に「だいこん1本ありまして~♪」から始まる「だいこんもみ」や「ロンドン橋落ちた~♪」の節の「あたまかたひざポン」などが好評でした。

 私がそうでしたが、まず全部覚えていない。周りに聞くのは恥ずかしい。そんな中で本は力強い味方です。育児書の各月齢の部分の簡単なあそびを紹介するコーナーや、わらべ歌あそびなどの本には具体的な動きの図や歌詞・楽譜などが載っていて参考になりました。とっかかりがあると、けっこう思い出すものもあります。知らないうちにちょっと練習して、赤ちゃんと遊ぶ姿をみせたらお母さんもびっくりするかもしれません。

絵本の読み聞かせ


 「いないいないばー」を喜ぶようになったら、動きや声を楽しめるようになっています。大きくて低いお父さんの声は、ギ音や繰り返しのある絵本に威力があるようです。
 『がちゃがちゃどんどん』という絵本は、ストーリーはなくカラフルな抽象画のような絵とギ音が繰り返されます。『じゃあじゃあびりびり』は「みず」「じゃあじゃあじゃあ」というように、ものの絵と対応する音の絵本です。自分の思うような声音と大きさで読んであげてください。

 実際に読み聞かせるときには、赤ちゃんはまだ動きや音のする方を見てしまいますので、ページをめくったときと、読んだ後に十分に間をとるようにしてください。「だるまさんが」の言葉と、だるまさんのしぐさが繰り返される『だるまさんが』では、まず、ページをめくると絵が変わったので赤ちゃんは絵本を見つめます。このとき「絵だな、ふんふん」となるような感じまで待ってあげてください。
 つぎに「だ~る~ま~さ~ん~が」とゆっくりはっきり読んであげてください。このとき赤ちゃんを見ると声のするお父さんの顔を見ています。「おうおう、声がしたぞ」となるような感じまで待ってあげてください。
 そしておもむろにページをめくって絵を十分見せて…の繰り返しです。まだ言葉の意味はわからなくても、絵の変わる動きや、声のリズムを楽しんでくれます。

貴重な時間


 泣くだけだった赤ちゃんが「いないいないばー」を喜ぶようになって、寝返りをし、「あーうー」と話すようになり、お座りをする。子どもの成長はあっという間です。赤ちゃんと一緒の貴重な時間を、絵本で楽しく過ごし、父親のぬくもりを伝えてあげてください。

(参考文献)

歌あそび・手あそび
『赤ちゃんから遊べるわらべうたあそび55』久津摩 英子/編著 チャイルド本社
『こどもにあそびうた絵本』 ブティック社
絵本
『がちゃがちゃどんどん』元永 定正/さく 福音館書店
『じゃあじゃあびりびり』まつい のりこ/作・絵 偕成社
『だるませんが』かがくい ひろし/さく ブロンズ新社
07:00 | 親力アップサイト
2015/11/27

【第20号】「絵本といっしょに」

赤ちゃんは絵本が大好き


 「かえるが、ぴょ~ん」そのことばに合わせてゆすりあげてもらうと、赤ちゃんはうれしそうに笑い、それを見たおかあさんも笑顔になります。3か月児健診の待ち時間に、赤ちゃん絵本の『ぴょーん』を読み聞かせをしているときの光景です。いろいろな動物が「ぴょ~ん」と飛び上がる場面が続き、その繰り返しと音の響き、なにより絵本をとおしておかあさんとふれあうことを赤ちゃんはよろこんでいます。

はじめまして赤ちゃん


 生まれたばかりの赤ちゃんと二人きりになったとき、どうかかわればいいかと途方にくれたことはありませんか?ことばがけが大切と知っていてもまだ反応してくれないし、あやしても笑ってくれない。こんな小さな赤ちゃんになんと語りかけたらいいのだろう。初めて親になったとき、だれしもそんなふうに悩むのではないでしょうか?そんなとき、絵本を手にとってください。絵本を読んであげることで、親も子も無理なく楽しい時間を持つことができます。

6か月を過ぎたら


 「おうちで絵本を読まれていますか?」と尋ねると、「ちゃんと聞きません」とか「すぐにあきてしまいます」といったお返事をよくいただきます。6か月を過ぎるころから、赤ちゃんは絵本の絵や形、ページごとの絵の変化を楽しめるようになりますが、1冊を最後まで楽しむのはまだむずかしいようです。それなら読み聞かせの意味がないのでは?いいえ、そんなことはありません。大好きな人にだっこしてもらって、絵本を読んでもらうのは、心地よいものです。身近な人が自分に語りかけてくれることは、赤ちゃんを満足させ、読み手の大人にもほっとする時間を与えてくれます。いい気持ちだな、うれしいなと感じ、読んでくれる人への信頼感が赤ちゃんの心に生まれてくるのではないでしょうか。そんな時間を共有する体験は、これからの子育ての大きな財産になっていくと思います。

 赤ちゃんにはまだことばの意味はわかりませんが、ことばのもつリズムは体で感じて楽しみます。「わんわん」「がたんごとん」といったことばの繰り返しは、おのずと心地よいリズムを生みだし、聞き手だけでなく読み手の気持ちもほぐしてくれます。無理にリズムをつけて読む必要はありませんが、自然に体がゆれるような動きには赤ちゃんといっしょに身をまかせてみてはいかがでしょう。

 どんな絵本がいいですかと質問を受けた時、参考にこれまでに読まれた絵本を伺うと、少し対象の月齢が高めかなと感じることがあります。今はインターネットの絵本紹介のサイトもあり、情報にはことかきません。大阪市立図書館のホームページでも「子どもにすすめる本」としてリストをご紹介しています。名作絵本や、おすすめ絵本と知ると心がそそられます。ただどんなよい絵本でも成長段階により、十分楽しめないこともあります。私自身が初めてわが子に『いないいないばあ』を読み聞かせたとき、何十年も読み継がれた赤ちゃん絵本の代表作ともいえるものですから、さぞよろこんでくれるだろうと期待したのですが、反応がなくがっかりしました。『いないいないばあ』は、すばらしい絵本ですが、周囲とのふれあいの中で、「いないいないばあ」を楽しめるようになったときにこそ、本当に楽しめるものなのです。

 でも一度読んで楽しめなかったからとあきらめないでください。成長に合わせて別の機会に読んだら、今度はお気に入りになるかもしれません。

1歳のころ


 1歳をすぎると簡単なストーリーのある絵本が楽しめるようになってきます。身近な世界を再体験できるような絵本を読んであげてください。お気に入りの絵本は「もう一回もう一回」と何度も繰り返しせがまれます。図書館で幼い男の子が大きな声で泣いていて、おかあさんが「うちにあるのと同じ絵本を借りるといってきかなくて」と話してくださいました。おうちにある大好きな絵本が図書館にもあって、うれしくてどうしても借りて帰りたかったのでしょうね。子どもは自分のよく知っている世界を何度も何度も繰り返し体験することで安心し、心の安定を得ることができます。そうなって初めて、新しい知らない世界へ一歩踏み出す勇気がわいてくるのでしょう。

3歳のころ


 十分安心をもらった子どもたちは3歳ごろには、絵本をとおして新しい体験をし、それを自分のものとして世界を広げていけるようになります。絵本の絵に助けられ、ことばで世界を描く力、想像力をはぐくんでいきます。学習するにも想像力が不可欠ですが、なによりも子どもが自分の世界を築き、外の世界と向き合おうとするとき、想像力は大きな助けとなるものです。

もっと大きくなっても


 子どもが大きくなってもどうか絵本の読み聞かせをしてあげてください。絵の力とともに、読み手とのあたたかな交流があるとき、絵本の味わいはより深く、聞き手の心に残ります。絵本を通してのふれあいは、子どもの心に長く残る大切な思い出となることでしょう。

 『ぴょーん』 まつおか たつひで/作・絵 ポプラ社
 『いないいないばあ』 松谷 みよ子/文 瀬川 康男/え 童心社

図書館がおすすめする子どもの本はこちら
 子どもにすすめる本



06:00 | 親力アップサイト