大阪市立図書館メールマガジン2026年10月号に対面朗読研修講師の安田知博さんのインタビュー記事を掲載! 中央
2026年10月15日発信の「大阪市立図書館メールマガジン第153号」のバックステージ通信に、大阪市立図書館で対面朗読協力者への研修講師を担当いただいている安田知博さんのインタビュー記事を掲載しました。
10月16日(金曜日)から対面朗読協力者の新規募集および講習会の受付を開始します。多くの方に対面朗読について興味を持っていただきたく、この講習会の講師を担当いただく安田知博さんにいろいろとお話を伺いました。
メールマガジンには一部抜粋した記事の掲載になりましたが、安田さん自身についてや音訳に対する思いなどをたくさんお話しいただいたので、ここにインタビュー全文を掲載します。
インタビュー(大阪市立図書館メールマガジン第153号に一部抜粋したものの全文)
図書館:まず、簡単に自己紹介をお願いします。
安田さん:私の肩書はいくつかあります。ひとつはフリーのナレーターです。NHK のEテレで放送されていた「バリバラ~障害者情報バラエティー~」という番組で、副音声の解説放送を担当していました。ほかに、小さなイベントの司会をしたり、舞台で朗読をしたりする仕事も時々しています。
ただ、自分で読んだり話したりするよりも、教える仕事のほうが多いですね。ひとつは音訳者の指導、もうひとつは高校放送部の指導です。月に1度だけ、アナウンススクールでニュース読みの授業も担当しています。
それから、まったく別の活動として、尺八の演奏家もやっています。
私には視覚障がいがあり、生まれたときから全盲です。明かりがわかる程度ですね。ですから、点訳や音訳サービスの利用者でもあります。
図書館:いろいろな活動をされていますが、まず、放送やアナウンスの世界に興味を持ったきっかけは何でしょうか。
安田さん:私は今45歳ですけど、小さい頃からずっとラジオを聞いていて、聞くことは好きなんですね。
私は熊本出身で、熊本の視覚支援学校で勉強していました。小さな学校で、生徒は100人を切っていましたけど、それでも校内放送があったんです。
「今日の行事は別にありません」という放送が流れていたんですね。「別にない」と言われる学校には行きたくないなあと思って。それで、もう少し何か、役に立つ放送ができたらいいなと思って、放送部の活動に参加するようになりました。
読むことや話すことに興味を持ったきっかけは、地元の熊本の音訳グループの皆さんと交流することがあって、グループの皆さんに音読を習ったんですね。その時に聞くだけじゃなくて、自分で読むのも楽しいなということに気がついて。それで、朗読やアナウンスの勉強をするようになりました。
図書館:放送部で活動したことは、安田さんにとってどんな意味を持っているんでしょうか。
安田さん:放送部には「高校放送コンテスト」という大会があって、「出なさい」と言われたので出場したんですね。結果的には、1年生で出場した全国大会の朗読部門で日本一になりました。でも、日本一になっても、別に友達ができたわけでもなく、一緒に喜んでくれる人がいるわけでもなくて、「つまんないな」と思っていたんです。そんな時に、他の学校の放送部員たちといっしょにイベントをつくるという経験をして、「放送部の活動って、やっぱり楽しいな。続けたいな」と思ったんですね。
図書館:選抜高校野球の入場行進のアナウンスも担当されたそうですね。大きな舞台でアナウンスをされた経験は、現在にも影響していますか。
安田さん:選抜甲子園の司会は、自分で応募したのではなくて、コンテストで上位に入った人の中から選ばれるんですね。これは桁違いに大きな仕事で、プレッシャーも大きいだろうなと思ったんです。でも、よく考えたら、書いたとおりに読む仕事なので、合図さえ出してもらえればできるなあと思って。せっかく選んでもらったので、「やってみよう」と。確かに度胸はつきました。4万人の人を前にしてしゃべる経験は、たぶんこの先できないでしょうから、大きな経験だったなと思います。
一方で、そうですね。「目が見えない高校生が司会をやった」ということがニュースになりました。もう30年近く前なので、「ハンディを克服して」といった文面もたくさん使われました。自分が伝えてほしいと思った方向性と、実際にメディアで世の中に広まったストーリーは、大きく違ったんです。なので、メディアの威力は恐ろしいな、ということを知るきっかけにもなりました。
図書館:その経験が、現在のナレーターや「伝える仕事」につながっているのでしょうか。
安田さん:そうですね。やっぱり、しゃべるのは得意だな、しかも好きだな、と。だから、できることがあれば、これからもやり続けたいなと思いました。
ただ、放送局に入りたいかというと、そうではなかったんです。放送するって、ただ声を出すだけじゃなくて、当然、伝える中身を準備することになりますよね。大きな組織の中で、「伝える側」に加わるのは、ちょっと難しいかなとも思いました。
現状では、自分がしゃべるより、教える仕事のほうが多くなっていますね。
図書館:安田さんは尺八奏者としても全国で演奏活動をされています。アナウンスと尺八というと、一見まったく違う世界のように思いますが、ご自身の中では共通する部分がありますか。
安田さん:どちらも耳をしっかり使うということですよね。技術の習得という意味では、アナウンスにも尺八の古典曲にも型(かた)があって、型を身につけるという意味では一緒ですよね。ただ同時に、その身につけた型をどう壊していくか、ということでもある。
今、合成音声というものがどんどん活躍の場を広げていますけど、日本語の音声には、本当に解析できない微妙な部分がいっぱいあります。だから、型どおりにしゃべっていない部分がいっぱいあって、それが合成化すると抜けてしまうんですね。
尺八も、近代化していく中で譜面ができて、基本的には譜面を見れば、誰が演奏しても同じものができることになっているんです。でも、実際には譜面に書けないことがいっぱいある。そこにこそ個性が出てくる。何をどう考えたのかということが出てくるので、なんていうか、「作って、壊して、作って、壊して」、自分だけの境地を目指すというところは共通だなと思います。
それと、実際に尺八の演奏活動にアナウンスがどう役立っているかというと、私は自称ですけど、「世界一よくしゃべる尺八奏者」だと思っています(笑)。なので、割と自分の言葉でたくさんしゃべりながらライブを進行して、尺八の魅力を伝えていくということが、自分の長所かなと思っています。
図書館:ここからは、音訳について伺います。音訳を教えるときに、安田さんが特に大切にしていることは何ですか。
安田さん:「自立した音訳者」を目指そう、ということですね。
「自立」というのはどういうことかというと、例えば、何かお手本を言われたとおりに真似するだけとか、あるいはアクセント辞典という調査道具がありますけど、そこに載っているとおりの音を出すだけだと、多分、そのうち人工知能に追いつかれてしまうと思うんですね。
日本語って、文脈依存度がとても高い言語です。全部のことがちゃんと書いてあるわけではなくて、前後の文脈で伝わっていっていることとか、いろいろあるんです。
例えば書き方でも、句点は文末に打つというのは、ほぼみんなが了解していますけど、読点には決まりがない。
一人一人の書き手がこだわって使う場合もあれば、気まぐれに使う場合もあれば、字数を増やすために使う場合もある。
そういう、一つ一つ違う、一人一人違う文章に対して、内容をきちんと深く読解して、最終的にどういう音声にすれば一番届きやすいかを、自分の力で考えることができる人を育てたいなと思っています。
図書館:かなり難しいことのようにも感じます。これまで教えてこられたなかで、そうした力が身についていく変化を感じた、印象的なエピソードはありますか。
安田さん:そうですね。よく、「7割、8割の情報が目から入ってきている」という分析をする人がいますよね。
みんなそれなりに勉強してきて、本を読んで勉強した人もいれば、社会で揉まれて勉強してきた人もいて、いろいろだと思うんです。
でも、「耳で聞く」ということを、あまり重視してこなかったような人も音訳の講座には来ています。そういう人たちが、聞くことの面白さにだんだん気づいていく。あるいは、自分の声や話し方に向き合うこと自体を楽しんでくれるようになっていく。そういう変化を見ていくのが面白いですね。
始めたばかりだった人が、3か月経ったら、テレビでたまたま聞いたアナウンサーの読み方に文句を言うようになったりとかですねえ(笑)。
図書館:自分の録音した声を聞くのが嫌だという人もいると思いますが、自分の声を好きになるためのアドバイスはありますか。
安田さん:「嫌いだ」とか「嫌だ」というのは、結局、不安から来ていると思うんですよね。
姿かたちはすぐ鏡に映して、1秒もかからずに自分で確認できます。例えば、今、下世話な言い方をすると、「自分の見た目はクラスで大体、中の下ぐらいだったよね」ということは、相対的に認識できていたりする。それに、友達同士でも、姿形とか服装とか髪型については割と自由に話せる。
それに対して、声は録音できるけど、一般の人はあまり録音しませんよね。話し方に関しては、よっぽど信頼している人同士でも、あまり話題にならないんですよね。だから、自分の声がその人にどう届いているかわからないので、勝手に不安がふくらんでしまう。録音した声と、自分で感じている声というのは、当然、耳だけで聞くのと、体全体で聞くのとで違いが出ますからね。そういう不安が重なったりして、勝手に心配して、自己評価が低くなっているところがあって、それは音訳を学んでいる人でも、払拭できる人と、ずっと残る人がいますね。残ったとしても、音訳で手掛けた資料が確実に人の役に立っていくのであれば、我慢できるよねというふうに納得していく人もいます。
図書館:これまでたくさんの人の声を聞き、読み方や発声の仕方を指導されてきたと思います。ご自身も視覚障がいがある安田さんだからこそ感じる、「聞きやすい声」「わかりやすい、伝わる声」には共通点がありますか。
安田さん:とっても魅力的な声を聞いているときって、意外と中身が頭に入ってこないんですよね。「いい声だな」と聞き入ってしまうけど、意外と中身は覚えていない、ということがあります。
だから、一つは「無理していない」こと。普段から使っている声を、その人が自分の人生の中で何十年間か出し続けてきた。その声をそのまま使って読んでくれるのが、結局は一番、伝わりやすいかなと思います。「どこに響かせよう」とか、声の美学というものはいろいろあって、やや低めの声のほうが心に届くという人もいたりします。でも、基本的には普段出している声を、そのまま生かしていく方向でいったほうがうまくいくかなと思います。
もう一つは、対面朗読でも録音を聞くのでも、聞く側には動機があるということです。「何か知りたい」とか、「読みたい」とか、そういう動機があって聞いているので、意識としてはもう中身のほうを向いているんですね。結局大事なことは、「知りたいことがわかったのかどうか」。「読みたい本がちゃんと読めた」と実感できるか、ということです。だから、「わかった」「読めた」と実感ができるならば、どんな声でもいいかなというところです。
長く聞いているうちに、だんだん自分の耳のほうが合わせていくので。「これはもう絶対合わせられない、この本を読むのは諦めよう」という声って、20年ぐらいさかのぼっても、一回もなかったですね。大体、許容できる範囲でした。
図書館:心強い言葉ですね。
今回、対面朗読協力者の募集ということで講師を担当していただきます。録音された音声を届けるのではなく、その場にいる人が、その人のために読む活動が対面朗読ですが、安田さんは対面朗読であることに、どんな魅力があると思いますか。
安田さん:「オーダーメイド」、読み手と聞き手の間でつくっていくっていうことですよね。
そもそも、本や資料の見方って、かなり個人差が大きいと思うんです。斜め読み、飛ばし読みをする人もいれば、本当にじっくり納得できるまで何度も止まりながら読んでいくような人もいる。パッと開いてここだけ読んで終わりという人もいる。
だから、その一人一人の依頼主の要望を聞きながら、できることの範囲内で、その要望に応えていく。そういう意味では、あらかじめでき上がってしまった録音図書とは、全然違いますよね。
最近は、「読む」って、いつも音読して伝えるだけじゃなくて、「知らない言葉が出てきたので調べて」とか。中には、いくつもの印刷物があり、「まず仕分けをお願いします」とか、そういうところから始まる場合もあるかもしれない。中には、ちょっとの休憩が、おしゃべりが盛り上がって苦笑いみたいなときもあるかもしれません。
あと、読みたいものを読むのではなく、仕方なく持ってくる場合もありますよね。例えば、資格を取るための試験を受けるんだとか、あるいは義理で「これを読め」と言われたから読まないといけないんだとか、興味のないものを持ってくるような場合もあるかもしれない。そういうときはね、私も学生時代にありますけど、寝てしまうこともあるかもしれません(笑)。
だから、そういう、人と人とでつくり上げていく時間ということで、確実に手応えのある活動だなと思います。
図書館:対面朗読では、上手に読むことだけではなく、聞き手とのコミュニケーションも大切だと思います。これから対面朗読に携わる人たちに、どんなことを大切にしてほしいですか。
安田さん:「読みたい」、あるいは「知りたい」というニーズを持って来る人が、基本的には相手ですよね。
多くの場合、初見に近い形、事前に予習できない形で読んでいくことになると思います。当然、ノーミスで何でも読めるわけではないですし、ジャンルによっては、一文字ずつ調べないと声に出せないものもあります。だから、ただスラスラと読み上げるということだけじゃなくて、場合によってはとても時間をかけて、場合によっては言葉を尽くして説明する。
例えば漢字の表記なんかも、かつて視力があった人とか、視覚障がいだけではない理由で対面朗読を希望している人だと、自分でペンを取って、「この字で合ってる?」と聞く人もいたりします。あるいは、「ちょっと手のひらに書いて」とか、「背中に書いて」とか。いろんな方法を使って、その人が「わかった」と感じる、知りたいことがわかったと感じるような工夫を考えていく。
うーん。やっぱり対話力ですね。
図書館:これから対面朗読に携わる一歩を踏み出す皆さんに、メッセージをお願いします。
安田さん:いろんなボランティアとか、市民活動とか、要するにお金を稼ぐ以外の活動って、たくさんありますよね。
なかなか音訳とか対面朗読って、グランドメニュー(いつでも提供されている定番メニューのこと)には入ってないんですよね。たとえば、手話とか要約筆記と比べると、グランドメニューにはあまり入っていない。だから、「よくわからないんだけどなあ」と思いながら、門をたたく人もいると思います。よくわからないでも大丈夫です。
いろんな人に来てほしいと思っています。それはなぜかというと、そもそも書籍にも資料にもいろんなジャンルがあって、全部のものが対象なので、いろんな得意分野を持った人が力を合わせて、様々なニーズに対応していくというのがいいと思うんです。韓国ドラマでも何でもいいので、いろんな得意分野を持った人がいるといい。「アナウンスをやっていました」「朗読をやっていました」という経験者はもちろんのこと、短大で栄養学をやったんだけどとか、ペーパー看護師なんだけどとか、どんな経験でもプラスになる可能性があります。もちろん、年齢も性別もですね。ぜひ応募してもらいたいと思います。
図書館:長時間のインタビューにご協力いただきありがとうございました。対面朗読の魅力や、これから一歩を踏み出す方の参考になるお話がたくさん伺えました。
対面朗読協力者新規募集の詳細は、以下をご覧ください。
また、大阪市立図書館の対面朗読サービスについては以下をご覧ください。

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