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大阪市史編纂所
 

古文書をよもう

 古文書読解は、資料を読む上で不可欠の技術です。編纂所でも「どうやって勉強したらいいですか?」というご相談をうけたまわることがあります。

 古文書を読みたいという希望をお持ちの方のために、博物館・図書館・カルチャーセンターなどで古文書読解講座が開かれています。また、通信教育の科目として古文書解読講座のようなものもあるようです。
(→大阪市の講座・催し物情報は大阪市生涯学習情報提供システムでもご覧いただけます。)

 お近くの関係機関に「古文書講座ってやってませんか?」「いつごろ古文書講座がありますか?」などとお問い合わせください。
大阪市立中央図書館においても、年1回程度、古文書講座が開催されています。

 これらの古文書講座は、多くの場合、入門編・中級編などとクラス分けされているため、全くの初心者の方でも、ご心配いただかなくてよいと思います。また、地域の歴史を学ばれる方々によって、「古文書を読む会」などがつくられている場合もあるようです。

 ここでは古文書を勉強したいと思いたった方にとって、参考になる(かもしれない)ことをいくつかをご紹介します。
 

お知らせ

必要なもの

古文書
 古文書を勉強するときには、古文書が必要です。もちろん、お手元にご先祖がお書きになった古文書などがあれば(→調査に伺いたいので市史編纂所までご連絡ください)、それを用いて勉強することもできますが、そもそもテキストがないという場合も少なくないと思います。
 
 

 日本歴史学会編『演習古文書選』(吉川弘文館)

 がオーソドックスな古文書を掲載しており、手頃な読解のためのテキストとして用いられたようですが、昨今では『はじめての古文書』といったたぐいの丁寧な解説がつけられた書籍もいくつか出ているようです。書店・インターネット書店などで探されてみてはいかがでしょう。

 また、博物館や美術館の展示図録には、古文書の写真・読み下し文が展示品とあわせて掲載されることが多いようです。興味のある展示図録などを手がかりとして勉強を始められてみてもよいかもしれません。

時間
 古文書は、現在私たちが用いている日本語と同様、ひらがな・カタカナ・漢字で書かれていますが、現在とは字のカタチが異なります。習字で行書などを勉強された方はとっつきやすいかもしれませんが、言葉や言い回しも現代の私たちにはなじみが薄く、なれないうちは「何が書いているかさっぱり分からない…」とげんなりすることもあると思います。ただ、焦らず勉強すれば身に付きますし、勉強するための時間と根気は必要です。

くずし字を読むための辞書
 読めない字が、現在のどの字にあたるか、を記した辞書で、いろいろな種類があります。
書き順から探すもの 例 くずし字解読辞典(東京堂出版)
(字をなぞりながら)こうなって、こうなって、こうなっている字はどれか?という探し方をします。このような辞書はくずし字読解ならではのものですが、まったく見当もつかないときに便利です。
現在の漢和辞典のようなもの 例 くずし字用例辞典(東京堂出版)
現在の漢和辞典のように部首ごとに漢字(くずし字)をならべた辞典です。部首は分かるけど、つくりがなぁ…とか、熟語みたいだけど下の字が分からないなぁ…という時に威力を発揮します。上の辞書である程度のめぼしをつけてから使うことが多いです。
現在の国語辞典のようなもの 例 音訓引き古文書字典(柏書房)
古文書は現在つかわれない言い回しをすることが多いですから、熟語の意味も同時に取りたいときに便利です。
 これらの辞典は、お近くの図書館の「参考図書」「辞書」などのコーナーにも置かれていると思います。ただ、残念ながら、これ1冊あればすべて読める!といったものはありませんので、学習の程度や必要に応じて揃えていかれたらよろしいかと思います。
 

あると便利なもの

国語辞典/漢和辞典
 部分的に読めない言葉に出くわしたときに、文意や字形を参考にしつつ、読めている部分の字を用いた熟語を探します。「この字かな?」と思ってくずし字の辞書を引き直す、という作業を何度か行っていると、「ああ!この字だったかぁ」と分かることがあります。昔の人は、いろんな言葉を使って文章を書いていますね。

地名辞典
 地名を正確に解読することは、古文書の内容を理解する上で大切なことです。
 古代・中世・近世・近代・現代、それぞれの時代に、地名はしばしば変化していきます。現在大阪市となっている範囲も江戸時代は、大坂市中のほかに4つの郡(東成郡・西成郡・丹北郡・若江郡)からなっていました。
 これらの地名辞典には、地名はもとより、その町や村にあったお寺・神社・名所など、地名に関連するさまざまな情報がまとめられていて、大変参考になります。
 いわゆる「平成の大合併」によって、地方自治体の合併が進みつつあるため、現在の地名を反映したものではなくなりつつありますが、古文書を読み解く上で、重要な参考資料であることにかわりはありません。

(追記)自治体合併による市町村名の変遷については、詳しく知りたい方は、市町村自治研究会編『全国市町村要覧』(各年度のものがあります。平成17年版=第一法規出版、2005)などをご参照ください。この要覧の巻末部分には、市区郡町村名索引(50音順)や「合併、市・町制施行、名称変更一覧表(昭和40年3月29日~平成17年10月1日)」が載っています。平成17年版には、「平成の大合併」が進行中であることから「旧市町村名索引」もついています。

当時の時代のあらましを知ることのできるような本
 例えば、当時の農業について記してある古文書を読もうとされる場合、スーパーで年中豊富な野菜に接している現代の私たちには、どのような野菜がどのような時期にどのように育てられ、どのあたりまで、どのようにして流通していたか、といったことも想像しにくくなっていませんか。(→例・なにわの伝統野菜って?(大阪府)
 読まれようとしている古文書に書かれた「文字」だけでなく、「内容」を理解しようとする際には、こうした参考資料がお手元にあると便利です。
 その際、『新修大阪市史』などのように各自治体で編纂されている自治体史も地域の歴史を記した文献としていろいろご活用いただけると思います。

古文書の形式について解説された本
 時代がさかのぼるにつれ、古文書の様式は現代とは違う点が増えてきます。各時代にどのような文書が作られていたかを含めて、佐藤進一『新版・古文書学入門』(新装版、法政大学出版会、2003年)や石上英一編『歴史と素材』(日本の時代史30、吉川弘文館、2004年)などの本を参考に勉強されてみてはいかがでしょうか。また、宮廷女官など独特の様式を持つ古文書などは、そのための入門書などもあります。

ルーペ
 拡大してみると、筆の運びがよく分かると思います。
 

読解のコツ

名前と数字を読めるようにする
 壱・弐・参…といった数字は、文書の書かれた年月日だけでなく、数量などとしても頻出します。
 名前や役職は○兵衛、□右衛門、△左衛門、○大臣、○○守など、よく出てくる字形のパターンはある程度決まっています。その形さえ覚えてしまうと、あと1・2文字読めれば、名前が読解できます。名前が分かると、なかみはよくわからなくても、なんとなくその文書に近づいた気がしませんか?

部首などパーツのかたちを覚える
 文字全体のくずし方を覚えるのではなく、(漢字を初めて覚えたときのように)パーツのかたちを覚えていくほうが効率的です。読めない字がある時、部首はなにか?見たことのあるようなパーツはないか?を考えることで、くずし字辞典などでアタリをつけるのが楽になります。
 最初から「たくさん覚えなきゃ読めないのだろうか…」とげんなりする必要はありません。「いとへん」と「にくづき」など、似たような形にくずしてあることも多くあります。

一文字はどこで区切れているか?を考える
 「候」という字は、しばしば小さな「、」として記されてしまいます。しかも、前後の字とつながっていることも多く、うっかり見逃してしまうことがあります。また、文字がどこで区切れているかが分かれば、書き順から探す辞書で、読みたい文字を探すことができます。

分からないときは、何回かなぞる
 字は手で覚えるものでもあります。読めない文字が出てきたら、なぞってください。ただし、資料が傷つきますので、直接古文書に鉛筆を走らせてはいけません。メモ用紙などに、繰り返しなぞることで、自分の知っているパーツが含まれていることに気づくことがあります。

いきなり最初から最後まで順番に全部の字を読もうとしない!
 読めない字が出てくるごとに辞書を引いてもよいのですが、まずは読める字だけ読んだ上で、文脈や文意からアタリをつけるほうが良いと思います。「?津国」→「摂津国」といった具合です。
 

力試しがしたい!

 昨今、各地の資料公開機関で、所蔵資料のデジタル化→インターネットによる展示がすすめられつつあります。
 その中には、古文書の画像だけでなく、読み下し文も併記してくれている場合がありますので、これらのサイトを訪ねて、いろいろな古文書を読んでみてはいかがでしょうか。

 大阪市立図書館デジタルアーカイブ オススメ!
  市立中央図書館の古文書・引札・古地図・絵はがき・写真などを公開しています。
  引札(ひきふだ。昔のチラシです)は字もやさしく、見た目も楽しいですよ。

 大阪市立大学学術情報総合センター電子コレクション 中級
  センター所蔵の市域を中心とする古文書・コレクション類の画像データベース類。
  

 東京大学史料編纂所 参考
  東京大学史料編纂所は日本史の史料収集・活用に関する研究機関です。
  その財産をいかして、オンライン版「電子くずし字字典データベース」も公開されています。